ちびっこが走り回ったり、赤ちゃんの泣き声がするなか、ミシンに向かって自身の制作に没頭する参加者たち。月に5~6回、長野市内で開催される「ミシンカフェ」(NPO法人Mam’s Style主催)は、裁縫をしたい人が集って好きなものをつくる場です。
講師は、toitoi名義でハンドメイド作品の制作販売をしている中村弥生さん。
参加者は困ったときに「やよいさーん!!」と中村さんに気軽に声をかけ、アドバイスを受けています。

公民館で開かれるミシンカフェ
個人的な「趣味」から、みんなの「カフェ」へ
4月に入園を控えたお子さんのいるママたちが入園グッズづくりをする季節。
ミシンカフェは毎回定員いっぱい。赤ちゃんをおんぶしたママたちが、カタカタとミシンを動かしています。
「自宅だと、家事とか、他にもやることがたくさんあって、ミシンへ向かうのはどうしても後回しになってしまいます。日中忙しいママたちが、その時間を確保したくて来てくれますね」
もともと、ものづくりをするが好きだったという中村さん。
出産・子育てを機に、本格的に裁縫をするようになったそうです。

中村さんが友人と2人で制作しているお昼寝アート
ママ仲間と一緒に、イベントで作品を販売したり、ママたちにマスクの作り方を教えたりする中で、現在のミシンカフェにつながっていきました。
「今の形は、自分では全然想像していなくて、求められることをしてきて今のミシンカフェになりました。準備も結構かかりますが、『作れて楽しかった』などと感想をもらうとうれしいです。完成すると私も達成感があります」
自然に広がる輪
ミシンカフェをはじめてもうじき丸2年。当初は参加者が少ない日が多かったそうです。
「1人も来ない日もありました。『今日は何をしようかな』と完全に自分の制作時間になってました。ここ最近、本当にいっぱいで。びっくりしています。4月から誰も来なくなったらどうしよう(笑)」
若いママだけでなく、友だちや知人のつながりで、幅広い年代の方が参加しています。
中村さんの分け隔てない気さくさが、ミシンカフェの居心地の良さを生んでいます。
「自分はどうすれば簡単に作れるかをわかっているから、つい楽なほうに流れてしまいます。でもミシンカフェに来てくれる人は、『これが作りたい』という出来上がり像をもって参加します。『こっちの方が簡単に作れるよ』とアドバイスしても、あえて難しいほうを選ぶ方もいます。手間がかかるかどうかじゃないんですよね」
本人の「作りたい」という気持ちに寄り添い、時には見本を試作している中村さん。
「自分だと避けてしまう手間のかかる作り方をする機会にもなるので、自分の成長にもなっています」

ミシンカフェへの思い
好きな布でオリジナルのものを作ることを楽しむミシンカフェの参加者たち。
裁縫が得意な人もそうでない人も、自宅ではとれない自分時間を過ごしています。
「天才肌でもない、アイディアもないし、告知も下手だし…」と終始控えめな中村さんでしたが、
「いつかは、自宅で毎日ミシンカフェをやりたいです」
と最後にぽつりと夢を語ってくれました。
一つのことに没頭し、やり遂げる心地よさを支えています。